ハンドブック:HPPA/インストール/ディスク
ブロックデバイスの概要
ブロックデバイス
Gentoo Linuxの、そしてLinux一般の、ブロックデバイス、パーティション、Linuxファイルシステムを含めた、ディスクやファイルシステム中心の考え方について詳しく見てみましょう。ディスクの入出力とファイルシステムについて理解することで、インストールのためのパーティションとファイルシステムを構築できるようになります。
まずはブロックデバイスについて見ていきます。SCSIドライブやシリアルATAドライブは両方とも/dev/sdaや/dev/sdb、/dev/sdcなどのようなデバイスハンドルとしてラベル付されます。更にモダンなマシンでは、PCI ExpressベースのNVMeソリッドステートディスクは、/dev/nvme0n1、/dev/nvme0n2などのようなデバイスハンドルを持ちます。
下の表は、各種のブロックデバイスがシステム上のどこにあるかを判断するのに役立つでしょう:
デバイスの種類 | デフォルトのデバイスハンドル | 編集者メモと、考慮すべき点 |
---|---|---|
SATA、SAS、SCSI、または USB フラッシュメモリ | /dev/sda | 2007 年頃から現在までに製造されたハードウェアで見られます。このデバイスハンドルはおそらく Linux 上でもっともよく使用されているものでしょう。この種のデバイスは SATA バス、SCSI、USB バスを介してブロックストレージとして接続されます。例えば、最初の SATA デバイス上の最初のパーティションは /dev/sda1 という名前になります。 |
NVM Express (NVMe) | /dev/nvme0n1 | ソリッドステートテクノロジとして最新の NVMe ドライブは PCI Express バスに接続され、一般市場でもっとも高速な転送速度を持っています。2014 年頃以降のシステムは NVMe ハードウェアのサポートを備えているかもしれません。最初の NVMe デバイスの最初のパーティションは /dev/nvme0n1p1 という名前になります。 |
MMC、eMMC、および SD カード | /dev/mmcblk0 | embedded MMC デバイス、SD カード、そして他の種類のメモリーカードはデータ用のストレージとして有用です。つまり、多くのシステムはこれらの種類のデバイスからのブートを許可していないかもしれません。これらのデバイスに Linux をインストールして常用するのはおすすめできません。それらの設計目標である、ファイルの交換用に使うものと考えてください。短期バックアップとして使用すると便利かもしれません。 |
上のブロックデバイスは、ディスクへの抽象的なインターフェースを表しています。ユーザープログラムはこれらのブロックデバイスを用いて、デバイスが SATA、SCSI、もしくは他のものであるかどうかを心配することなしにディスクと通信することができます。プログラムは容易にディスク上の記憶領域を、ランダムアクセスできる 4096 バイト (4K) ごとの連続領域としてアドレッシングできます。
パーティションとスライス
理論的にはディスク全体をLinuxシステムに使用することが出来ますが、実際にはほとんど行われません。その代わりに、ディスクブロックデバイス全体を小さく、より扱いやすいブロックデバイスに分割します。ほとんどのシステムでは、これはパーティションと呼ばれます。スライスと呼ばれる、似た技術を使用するアーキテクチャも存在します。
パーティション構成の設計
パーティション数とサイズ
ディスクのパーティションレイアウトの設計は、システムに対する要求と、デバイスに適用されるファイルシステムに大きく依存します。多数のユーザがいる場合、セキュリティを向上し、バックアップの作成とその他のメンテナンスを容易にするために、/home を分離されたパーティションに配置することが推奨されます。もし メールサーバとして動作する場合は、/var を分離されたパーティションとし、すべてのメールを /var ディレクトリに保存すべきでしょう。ゲームサーバでは、ほとんどのゲームサーバソフトウェアは /opt にインストールされるので、/opt を分離されたパーティションとすることができます。これらが推奨される理由は最初の /home ディレクトリと同様で、セキュリティ、バックアップ、そしてメンテナンスです。
Gentoo では多くの場合、/usr と /var は相対的に大きい容量を確保すべきです。/usr にはシステム上で利用可能なアプリケーションの大部分と、Linux カーネルソース (/usr/src 配下) が配置されます。デフォルトでは、/var には Gentoo ebuild リポジトリが (/var/db/repos/gentoo 配下に) 配置され、ファイルシステム依存ではあるものの通常 650 MiB ほどのディスク容量を消費します。この推定容量には /var/cache/distfiles と /var/cache/binpkgs ディレクトリは含まれていません。これらはそれぞれ、ソースファイルとバイナリパッケージ (使用している場合) を格納するディレクトリで、システムに追加すればするほど大きくなっていきます。
適切なパーティションの数とサイズは、システムを取り巻く環境と、トレードオフを考慮することで大きく変わります。パーティションやボリュームを分離することには下記の利点があります:
- それぞれのパーティションまたはボリュームに対して、最も性能が高いファイルシステムを選択できます
- ゾンビプロセスがパーティションまたはボリュームに継続的に書き込みをした場合でも、システム全体の空き領域を使い切ることはありません
- 必要ならば、複数のチェックを並行して実行することで、ファイルシステムチェックの時間を短縮できます (複数のパーティションよりも複数のディスクの方が効果を実感できます)
- リードのみ、
nosuid
(setuidビット無効)、noexec
(実行ビット無効)等のマウントオプションによって、セキュリティが向上します
しかし、複数パーティションにはデメリットもあります:
- もし適切に設定されていないと、あるパーティションが空き領域をたくさん持ち、別のパーティションにはまったく空き領域がなくなるといったことが起こり得ます。
- /usr/ を独立したパーティションにすると、他のブートスクリプトが動作する前にパーティションをマウントするために、initramfs を使ってブートする必要があるかもしれません。initramfs の生成と保守はこのハンドブックのスコープの範囲外ですので、慣れていない方が /usr を独立したパーティションとすることは推奨しません。
- SCSI や SATA では仕様上の制約により、GPT ラベルを使用しない限りは 15 個までしかパーティションを作れません。
サービスおよび init システムとして systemd を使うつもりのインストールでは、/usr ディレクトリはルートファイルシステムの一部とするか、または initramfs によりマウントされるようにして、ブート時に利用できるようにしなくてはなりません。
スワップ領域について
スワップ領域のサイズについて完璧な値というものはありません。スワップ領域の目的は、メインメモリ(RAM)が逼迫した際、カーネルにディスク領域を提供するためにあります。スワップ領域があれば、カーネルは最近最も使われていないメモリページをディスクに書き出し(スワップもしくはページアウト)、現在のタスクのために RAM 上に置かれたメモリを開放します。もちろん、もしディスクにスワップされたページが急に必要になった場合は、これらのページはメモリに戻す(ページイン)必要があります。これには、RAM から読み込むより相当長い時間がかかります(メインメモリと比較してディスクはとても遅いためです)。
システムがメモリを大量に消費するアプリケーションを実行しないとき、またシステムが多くの RAM を持っているときは、それほど大きいスワップ領域は必要ではありません。しかし、ハイバネーションの際に、スワップ領域はメモリの内容すべてを保存するために使われる(サーバシステムよりも、デスクトップやラップトップシステムでよくあることです)ことに留意してください。システムにハイバネーションのサポートが必要な場合は、メモリの全体量以上のサイズのスワップ領域が必要です。
一般的なルールとして、スワップ領域のサイズは内部メモリ (RAM) の 2 倍であることが推奨されます。複数のハードディスクを備えるシステムでは、並列して読み込み/書き込み操作が行えるように、それぞれのディスクに 1 つずつスワップパーティションを作成するのが賢い方法です。スワップ空間内のデータにアクセスしなくてはならないときに、ディスクがより高速にスワップできるほど、システムもより高速に動作するでしょう。回転式ディスクとソリッドステートディスクを比較すると、SSD 上にスワップを置いたほうが高いパフォーマンスが発揮できます。また、スワップパーティションの代わりにスワップファイルを使用することもできます。これは主にディスク容量が非常に限られたシステムで興味深いものです。
HPPAでのfdiskの使用
必要なパーティションを作成するのにfdiskを使用してください:
root #
fdisk /dev/sda
HPPAのマシンは、PC標準のDOSパーティションテーブルを使用します。新しいDOSパーティションテーブルを作成するために、oキーを押してください。
Command (m for help):
o
Building a new DOS disklabel.
PALO(HPPAのブートローダ)は、動作するために特別なパーティションを必要とします。PALO用に、ディスクの先頭に最低16MBのパーティションを作成する必要があります。パーティションの種類はf0(Linux/PA-RISC boot)でなければなりません。
もしこれを忘れ、特別なPALOパーティションなしでインストールが進んでしまうと、結局システムは再スタートに失敗するでしょう。また、もしディスクが2GB以上ある場合、ブートパーティションは確実にディスクの最初の2GB以内に収めてください。PALOは2GB以降のカーネルを読み込むことが出来ません。
/etc/fstab
単純でデフォルトのパーティション設計/dev/sda2 /boot ext2 noauto,noatime 1 1 /dev/sda3 none swap sw 0 0 /dev/sda4 / ext4 noatime 0 0
fdiskでは、このようなパーティションレイアウトなら以下のような出力になるでしょう:
Command (m for help):
p
Disk /dev/sda: 4294 MB, 4294816768 bytes 133 heads, 62 sectors/track, 1017 cylinders Units = cylinders of 8246 * 512 = 4221952 bytes Device Boot Start End Blocks Id System /dev/sda1 1 8 32953 f0 Linux/PA-RISC boot /dev/sda2 9 20 49476 83 Linux /dev/sda3 21 70 206150 82 Linux swap /dev/sda4 71 1017 3904481 83 Linux
ファイルシステムを作成する
はじめに
パーティションが作成できたら、その上にファイルシステムを作成します。次の節ではLinuxがサポートする各種ファイルシステムを紹介します。どのファイルシステムを使うかをすでに決めているなら、パーティションにファイルシステムを適用するへ進みましょう。そうでなければ、次の節を読んで利用可能なファイルシステムについて知るのがよいでしょう。
ファイルシステム
Linux は多くのファイルシステムをサポートしていますが、それらの多くは特定の目的をもって配備するのが賢明なものです。特定のファイルシステムのみが hppa アーキテクチャ上で安定して動作するとされています - 重要なパーティションに実験的なファイルシステムを選択するときは、事前にファイルシステムのサポート状況を十分に知っておくことを推奨します。ext4 はすべてのプラットフォームで、すべての目的で推奨されるファイルシステムです。以下は、網羅的ではないリストです
- btrfs
- スナップショット、チェックサムによる自己修復、透過的圧縮、サブボリューム、RAIDの統合など、多くの先進機能を提供する次世代のファイルシステムです。 深刻な問題への対処がより新しい LTS カーネルブランチのリリースにしか含まれていないので、5.4.y より前のカーネルを btrfs と実運用するのは安全性の保証がありません。さらに古いカーネルブランチではファイルシステム破損の問題はよくあることで、4.4.y より古いものは特に危険で破損しやすいです。古い (5.4.y より前の) カーネルでは、圧縮が有効化されているとより破損が発生しやすいです。RAID 5/6 とクオータグループは、btrfs のすべてのバージョンで安全ではありません。さらに btrfs では内部断片化 (空き領域が DATA + SYSTEM チャンクにピン留めされているが、METADATA チャンクが必要としている) のために、df が空き領域を報告したのに ENOSPC でファイルシステムの操作に失敗するという、直感に反することが起きることがあります。加えて、a single 4K reference to a 128M extent inside btrfs は、空き領域が存在するが割り当てには利用できないということを引き起こすことがあります。これも df が空き領域を報告するのに btrfs は ENOSPC を返す原因になり得ます。sys-fs/btrfsmaintenance をインストールして定期的に実行するスクリプトを構成することで、btrfs をリバランスして ENOSPC 問題の可能性を減らすことができますが、空き領域が存在するのに ENOSPC のリスクは消えはしないでしょう。ENOSPC が発生するかは用途によります。運用中の ENOSPC のリスクが許容できない場合は、別のものを使うべきです。btrfs を使うなら、問題が発覚している構成を避けることを確実にしてください。ENOSPC は例外として、最新のカーネルブランチに存在する問題についての情報は btrfs wiki status page で確認できます。
- ext4
- もともと ext3 のフォークとして作られた ext4 は、新機能、パフォーマンスの向上と、ディスク上でのフォーマットの適度な変更による、サイズ制限の撤廃を提供します。ボリュームは1EBまで広げることができ、最大のファイルサイズは16TBです。古典的なext2/3のbitmap block割当ての代わりに、ext4 はextentを使い、大きなファイルでのパフォーマンスを向上し、断片化を減らしています。ext4は他にもより洗練されたアロケーションアルゴリズム(遅延割当てと複数ブロック割当て)を提供し、ファイルシステムドライバーに、ディスク上のデータのレイアウトを最適化するより多くの方法を与えています。ext4 は推奨される、全目的、全プラットフォームのファイルシステムです。
- f2fs
- Flash-Friendly File Systemはもともと、SamsungによってNANDフラッシュメモリで利用するために作られました。2016年Q2現在、このファイルシステムはまだ未熟なものと思われますが、GentooをmicroSDカードやUSBスティックや他のフラッシュベースの記憶装置にインストールする際にはすばらしい選択でしょう。
- JFS
- IBMの高パフォーマンスジャーナリングファイルシステムです。JFSは軽量、高速かつ信頼できる、B+木ベースのファイルシステムで、様々な条件で良いパフォーマンスが出ます。
- XFS
- メタデータジャーナリングのあるファイルシステムで、堅牢な機能セットを持ち、スケーラビリティに最適化されています。XFSはどうやら、様々なハードウェアの問題に対してはあまり寛大ではないようですが、継続的に新しい機能を取り入れるようにアップグレードしてきています。
- VFAT
- 別名FAT32。Linuxでサポートされていますが、標準的なUNIXパーミッションの設定をサポートしていません。ほとんど、他のOS(Microsoft WindowsまたはApple macOS)との相互運用性/交換のために使われていますが、いくつかのシステムブートローダーファームウェア(たとえばUEFI)でも必要になります。UEFIシステムを使用している場合は、システムをブートするためにはVFATでフォーマットされたEFIシステムパーティションが必要になるでしょう。
- NTFS
- この "New Technology" ファイルシステムは、Windows NT 3.1以降のMicrosoft Windowsのフラッグシップファイルシステムです。VFATと同様、BSDやLinuxが正しく動作するために必要なUNIXパーミッション設定や拡張属性を保持しないため、ほとんどの場合ルートファイルシステムとして使うべきではありません。Microsoft Windowsとの相互運用/交換のためにのみ使うべきです(のみの強調に注意してください)。
パーティションにファイルシステムを適用する
パーティションまたはボリュームの上にファイルシステムを作成するには、ファイルシステムごとに異なるユーザースペースのユーティリティが利用可能です。下表でファイルシステムの名前をクリックすると、それぞれに追加の情報が得られます:
ファイルシステム | 作成コマンド | Minimal CD にある? | パッケージ |
---|---|---|---|
btrfs | mkfs.btrfs | はい | sys-fs/btrfs-progs |
ext4 | mkfs.ext4 | はい | sys-fs/e2fsprogs |
f2fs | mkfs.f2fs | はい | sys-fs/f2fs-tools |
jfs | mkfs.jfs | はい | sys-fs/jfsutils |
reiserfs (非推奨) | mkfs.reiserfs | はい | sys-fs/reiserfsprogs |
xfs | mkfs.xfs | はい | sys-fs/xfsprogs |
vfat | mkfs.vfat | はい | sys-fs/dosfstools |
NTFS | mkfs.ntfs | はい | sys-fs/ntfs3g |
例えば、パーティション構造例の通りに、EFI システムパーティション(/dev/sda2)を FAT32 として、ルートパーティション(/dev/sda4)を ext4 として設定するには、次のコマンドが使えます:
root #
mkfs.vfat -F 32 /dev/sda2
root #
mkfs.ext4 /dev/sda4
ext4 を (8 GiB 未満の) 小さいパーティションに使用するときは、十分な inode 数を確保できるように適切なオプションを指定してファイルシステムを作成する必要があります。これは、各ファイルシステム毎に、以下のコマンドのうちのひとつを使用することで行えます:
root #
mkfs.ext4 -T small /dev/<device>
上のコマンドは通常では、「inodeあたりのバイト数」を16kBから4kBに減らすので、ファイルシステムに4倍のinode数を確保できます。
それでは、新しく作成したパーティション(または論理ボリューム)にファイルシステムを作成しましょう。
スワップパーティションを有効にする
mkswapはスワップパーティションを初期化するために使われるコマンドです:
root #
mkswap /dev/sda3
スワップパーティションを有効化するには、swaponを使います:
root #
swapon /dev/sda3
上述のコマンドで、スワップを作成して有効化しましょう。
ルートパーティションのマウント
非 Gentoo インストールメディアを利用している場合、次を実行してマウントポイントを作成する必要があります:
root #
mkdir --parents /mnt/gentoo
パーティションが初期化され、ファイルシステムを格納したので、それらのパーティションをマウントする時です。 mount コマンドを使用しますが、作成されたすべてのパーティションに必要なマウントディレクトリを作成することを忘れないでください。例として、 rootパーティションをマウントします。
root #
mount /dev/sda4 /mnt/gentoo
もし/tmp/を別のパーティションに置く必要があるなら、マウントしたあと権限の変更を忘れずに行ってください:
root #
chmod 1777 /mnt/gentoo/tmp
このあと解説の中で、proc ファイルシステム (仮想的なカーネルとのインターフェース) が、他のカーネル擬似ファイルシステムと同様にマウントされますが、まず最初は、Gentoo インストールファイルをインストールします。